小児科 抄読会

小児の急性中耳炎に、
すぐ抗菌薬は要るか?

Antibiotics for acute otitis media in children(Cochrane Database Syst Rev 2023)
Venekamp RP, Sanders SL, Glasziou PP, Rovers MM. Cochrane Database Syst Rev 2023;11:CD000219. doi:10.1002/14651858.CD000219.pub5
今日の症例

発熱と耳痛で来た2歳6か月の子に、すぐ抗菌薬を出すべきか?

外来の1場面(架空の症例。所見は国内GL2024の重症度スコアの項目に合わせて記載)
症例は説明のための架空のもので、実在の患者ではない/スコアの項目:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版
背景

多くは自然に治るのに8割超に抗菌薬が出ており、根拠を確かめる必要がある

急性中耳炎のかかりやすさと、高所得国の外来での抗菌薬処方の割合(Cochrane 2023 の背景に引用された報告)
出所:Cochrane 2023;CD000219(Background:Teele 1989・Monasta 2012・Burvenich 2022・Rosenfeld 1994・Rudberg 1954 を引用)/国内GL2024 CQ3-4
今日の結論

コクランの結果と国内GL2024に沿えば、軽症の中耳炎は鎮痛して3日みるべきだ

この論文から言えることと、それぞれの根拠のページ(小児の急性中耳炎・高所得国の試験)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane Database Syst Rev 2023;11:CD000219/日本耳科学会ほか. 小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版
問いと論文

13試験の統合なら、抗菌薬の利益と害を同じ物差しで比べることができる

臨床の問い(PICO)と読んだ論文(Cochrane Database Syst Rev 2023年11月)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane Database Syst Rev 2023;11:CD000219(抄録・組み入れ基準)
方法

今回の更新で加わったのは1試験に限られ、結論は13試験の積み上げで決まる

今回の更新の検索と組み入れの流れ(2023年2月14日までの検索、件数)と、2つの比較の規模
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Search methods/Results of the search/Included studies)
結果

抗菌薬は最初の1日の痛みを変えず、その後の上乗せも20人に1人にすぎない

時点別に痛みが残る子と副作用が出る子(抗菌薬 vs プラセボ、1,000人あたり)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Summary of findings 表1。抗菌薬群の人数はプラセボ群の平均×相対リスク)
誰に効くか

抗菌薬の上乗せは一律ではなく、痛みが残りやすい子ほど大きくなる

抗菌薬なしで痛みが残る割合を変えたときの、2〜3日目の100人の内訳(試算)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Summary of findings 表1)/参考値:Rovers MM ほか. Lancet 2006;368:1429-35。試算は本資料
利益と害

100人に出すと副作用の増える子が痛みの減る子を上回り、説明が必要になる

抗菌薬を出さない場合と出す場合の100人の内訳(2〜3日目の痛み、嘔吐・下痢・発疹)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Summary of findings 表1。1,000人あたりの値を100人に換算)
待つ方針との比較

経過観察と比べても、確実性が高いのは痛みの改善ではなく副作用の増加だ

比べる相手ごとの相対リスク(95%信頼区間)とエビデンスの確実性(GRADE)
出所:Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Summary of findings 表1・表2)
批判的吟味

確実性は高いが、厳格に診断した2試験の大きな効果を見落としてはならない

抗菌薬 vs プラセボ13試験のバイアス対策と診断基準(試験数)、厳格に診断した2011年の2試験
出所:Cochrane 2023;CD000219(Risk of bias)/Hoberman A ほか. NEJM 2011;364:105-15/Tähtinen PA ほか. NEJM 2011;364:116-26
国内ガイドライン

国内GL2024は5点以下の軽症に限り、抗菌薬なしで3日みることを推奨する

重症度スコアと重症度別の初期治療(小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版。入力は架空の例)
出所:日本耳科学会・日本小児耳鼻咽喉科学会・日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会. 小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版(CQ1-4・CQ3-4・治療アルゴリズム)
症例に戻る

症例は4点の軽症なので、鎮痛して3日後に再評価することができる

p.2 の症例の重症度スコアと方針、家族への説明、3日後の再評価の流れ(国内GL2024・Cochrane 2023)
出所:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版(CQ1-4・CQ3-4・軽症の治療アルゴリズム)/Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219(Summary of findings 表1)
Take home

軽症は3日みて、2歳未満の両側や耳漏では早めに抗菌薬を考えるべきだ

明日から変えることと、それぞれの根拠のページ
出所:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版/Lieberthal AS ほか. Pediatrics 2013;131:e964-99/NICE NG91(2022改訂)/Cochrane 2023;CD000219/Rovers MM ほか. Lancet 2006
議論したいこと

この方針を院内で回せるかは、3日後の再評価を確実にする仕組みが決める

論点と、議論のための材料(国内GL2024・Cochrane 2023・2011年の2試験)
出所:小児急性中耳炎診療ガイドライン2024年版 CQ3-4/Venekamp RP ほか. Cochrane 2023;CD000219/Hoberman A ほか. NEJM 2011/Tähtinen PA ほか. NEJM 2011
参考文献

数字はすべて次の一次資料から取り、試算はp.8の1か所に限る

本発表で用いた一次資料(2026年9月26日に確認)
この一覧の各資料は、各ページの脚注と詳細パネルの出所に対応する