となりのAI ・ M3連載 ・ 実装シリーズ

第2回 なぜ今、医師がバイブコーディングなのか

皆さん、こんにちは。『となりのAI』実装シリーズの第2回です。第1回の続きとして、なぜ今バイブコーディングなのかを扱います。医師が自分で小さな道具を作る理由と、今それが現実的になった理由を追います。

第2回 全 19 スライド 著者:岡本 賢

1タイトル

なぜ今、医師がバイブコーディングなのか

スライド 1:なぜ今、医師がバイブコーディングなのか

前回の引き継ぎ第1回では、問いを一つに絞りました。なぜ、医師はAIを使うのか。正解はB。

理由を添えて具体的に指示する方がうまくいきます。目の前の患者へ。奪われた時間と人間性を、取り戻す。まだ見ぬ身体へ。これまで観えなかった医学を、観る。

前回の最後に、こう言いました。観る力をいちばん伸ばす道が、自分の道具を、自分で作ること。次回、それを話します、と。

今回は、その話です。出来合いのAIを、ただ使うだけではなく、自分の道具を、自分で作る。バイブコーディング。なぜ、今、医師がそれをやるのか。

2The World, Already Here

SFは、もう"観て待つもの"じゃない

スライド 2:SFは、もう"観て待つもの"じゃない

まず少しだけ、視野を上げさせてください。私たちは子どものころ、SF映画を観て、未来にワクワクしていました。でも今は、その未来が作られていく過程の中に、自分がいる。

火星にロボットを送る、という話が、10年後ではなく、数年後の話になっている。続きを待つより、今このときのほうが、ずっとおもしろい。未来を、ただ待つ時代では、なくなりました。

3Already Happening

ドラえもんの道具を、自分で作れる時代

スライド 3:ドラえもんの道具を、自分で作れる時代

ドラえもんのひみつ道具は、昔は誰かがくれるものでした。でも今は、自分で作れる。しかもこれは、医療の外で、もう普通に起きています。

数字を3つだけ。バイブコーディングを使う人の、6割以上が、コーディング経験のない人です。新しいスタートアップの、3社に1社が、たった一人で創業されている。

道具を作る会社の売上は、1年で10倍。専門家でなくても、自分の道具を、自分で作る。それが、世界の当たり前になりつつあります。

では、実際に作っている人たちを、見てみましょう。

4Real People, Real Builds

作っているのは、ふつうの人たち

スライド 4:作っているのは、ふつうの人たち

左から。ゲームを作ったことのない人が、AIだけで、3時間で飛行ゲームを作りました。数週間で、月5万ドル。

イーロン、マスクが広めて、ゲームに火星が足されたほどです。真ん中。日本でも、非エンジニアの社員が、24時間で社内ツールを作って、外注費を減らしている。

そして右。医師が、自分の臨床の困りごとを、自分の小さな道具にする。題材は、毎日の診療から湧いてきます。

ちなみにvibe codingという言葉は、去年、イギリスのコリンズ辞典が2025年の言葉に選びました。一過性の流行ではない、ということです。

5Evidence ・ 原典

本物かどうか、確かめられます

スライド 5:本物かどうか、確かめられます

本当かな?と思いますよね。だから、原典をそのまま置きました。左は、このバイブコーディングという言葉が生まれた、研究者カルパシーの投稿。

右は、さっきの飛行ゲームを作った、本人の投稿です。100%スムーズじゃなかったけど、8割はうまくいったと、正直に書いています。QRから、本人の投稿をそのまま読めます。私は、盛っていません。

6Two Ends, Same Wave

同じ波の、両端

スライド 6:同じ波の、両端

ここで、同じ波の両端を見てください。一方の端では、イーロン、マスクが、2026年末にヒューマノイドを載せて火星へ、と宣言している。もう一方の端では、あなたが、机の上で、日本語で話しかけて、自分の道具を作っている。

スケールは違いますが、動かしているのは、同じAIの波です。世界の最前線と、あなたの机は、地続きなんです。

7Don't Just Watch

観客席に座っているのは、もったいない

スライド 7:観客席に座っているのは、もったいない

これだけのことが、数年のうちに起きる時代です。観ているだけでも、十分おもしろい。でも、せっかく同じ時代に立っているなら、自分も作る側に、回れます。

その第一歩は、すぐ目の前にあります。

8The Fork

AIを使うその先に、もう一つの分かれ道

スライド 8:AIを使うその先に、もう一つの分かれ道

ここで、一つの分かれ道があります。一方は、出来合いのAIを、ただ使うだけの側。便利ですが、自分の困りごとにぴったりの道具は、手に入りません。

もう一方は、作る側に回る。自分の困りごとを、自分の道具にする。これが、バイブコーディングです。

第1回でAIは、能力を拡張するパートナーと話しました。それを一番濃く受け取るのが、この、作る側に回ることなんです。

バイブコーディング=自然言語で意図を伝え、AIがコード生成、修正を担う開発スタイル。医師にとっては、専門知識(医学)と検証力がそのまま差別化要因になります。

9What "Making" Means

作るとは、コードを書くこと

スライド 9:「作る」とは、コードを書くこと

そもそも作るって、どういうことか。今、インターネットで動いているものは、ほとんど全部、コードでできています。Webサイトも、アプリも、地図も、決済も、ゲームも。

ぜんぶ、コードです。そして、コードは言語です。現代でものを作るとは、もう、コードが欠かせない、ということなんです。

10The Old Way

これまで、コードは特殊なスキルだった

スライド 10:これまで、コードは「特殊なスキル」だった

ただ、これまでのコードは、こうでした。真っ暗な画面に、呪文のような文字を、カタカタ打ち込む。覚えることも多くて、エンジニアという専門家のものでした。

だから多くの人が、自分には関係ない作る側にはなれないと思っていた。

11Now: Vibe Coding

今は、ことばで作れる

スライド 11:今は、ことばで「作れる」

でも今は、もう、カタカタ打つ必要がありません。日本語で話しかける。会話する。

それだけで、コードができる。これが、バイブコーディングです。AIと一緒に、作っていく過程。

アイデアと、最初のひと言さえあればいい。このデータを持ってきてと頼むのも、特別なスキルは要りません。実は、Claudeを作っているAnthropicでさえ、今は本番のコードの8割以上を、AIが書いています。

もう、特別な人だけの話では、ないんです。

12The Maker Side

自分の道具を、自分で作る

スライド 12:自分の道具を、自分で作る

自分の道具を、自分で作る。今日いちばん、覚えて帰ってほしい言葉です。

13My Story

私も、最初は半信半疑でした

スライド 13:私も、最初は半信半疑でした

正直に言うと、私も、最初は半信半疑でした。私は小児科医です。コードは、書けません。

本当に、特別な人の話では、ありません。

14Real Builds, Live Now

非エンジニアが、こんなものを作っています

スライド 14:非エンジニアが、こんなものを作っています

実際に、こんなものが作られて、今、世界で使われています。左は、ブラジルのマーケターの方が、45日で作ったPlinqという女性の安全アプリ。公的な記録から、身を守れる。

今は2.5万人以上が使い、200件以上の危険を防いでいます。真ん中は、Anthropic自身が公開している、話すだけで作れる道具のギャラリー。右は、ヨガ教室の予約システム。

未経験の方が、2時間で作って、その週に公開しました。そして、さっきの飛行ゲームは、今も誰でも遊べます。よければ後で、このQRから、実際に動かしてみてください。百聞は一見にしかず、です。

15Why Now ①

大事な仕事が、書くから診るへ

スライド 15:大事な仕事が、「書く」から「診る」へ

ここからが、医師の話です。これからは、書くより診るが、中心になります。頼む、出る、診る、直す。

この、3番目の診る。研修医の鑑別を、そのまま信じずに、自分の目で確かめる。AIが書いたものを診るのも、まったく同じ動作なんです。

何が起きているか説明できて、初めて完成。動けば完成は、医療では通用しません。その検証こそ、医師の本領です。

16Why Now ②

あなたは、作る本人で、使う本人

スライド 16:あなたは、作る本人で、使う本人

普通、アプリを作る人と、使う人は、別です。でも私たちは、同じ一人。自分の困りごとを、自分で形にして、自分で毎日使える。

何が要るか、何が要らないか、誰よりも知っている。だから、誰よりもいいものが作れる。自分の臨床から、題材はいくらでも湧いてくる。

これは、他の誰にも真似できない、当事者性という強みです。

17Four Strengths

医師がバイブコーディングをやる意味は、4つ

スライド 17:医師がバイブコーディングをやる意味は、4つ

まとめると、医師がこれをやる意味は、4つあります。検証。AIが出したものを、医者の目で診る。

安全。患者情報は入れない、説明できないコードは外に出さない。当事者性。

作る本人で、使う本人。そして、止まって書く。観るだけにしない。

特に、2つ目の安全は、いちばん大事です。鑑別の根拠を言えないまま、診断を確定しない。それと、まったく同じ文化で、AIにも向き合います。

18Autonomy Slider

毎回、どこまで任せるかを宣言する

スライド 18:毎回、「どこまで任せるか」を宣言する

やり方のコツを、一つだけ。毎回、AIに、どこまで任せるかを、自分で決めます。試す段階では、全部任せていい。

でも、保存したり、人に見せ始めたら、握る範囲を、自分側に戻す。この任せ方を、自分で決める。これも、これから身につけていきましょう。

19Your Turn

次は、あなたの番です

スライド 19:次は、あなたの番です

次は、あなたの番です。次回から、バイブコーディングで、あなた自身のものを、作りはじめます。観るだけで終わらせず、手を動かす。

そこから、変わっていきます。今日、帰ったら、一つだけ。Claudeを開いて、こう打ってみてください。

外来でよく使う、○○を、かんたんな入力フォームにして。それだけで、始まります。それでは、また次回。ありがとうございました。

参考文献・リンク

スライドで触れた原典・統計・具体例のURLです。QRコードの先は、こちらからも開けます。